臨時雇用関係

2016年5月20日付で改正された第4904号トルコ労働協会法改正により、『特別雇用事務所』という機関の開設が可能となりました。
  『特別雇用事務所』とは、仕事を探している人々を適職に就かせたり、種々の業務に適している労働者を探す仲介をすることによって、臨時雇用関係を築くべく、トルコ労働協会法に基づいて個人又は法人が開設する事務所です。
 
 ここでは、上記と同日に改正された第4857号労働法(以下、労働法)第7条『臨時雇用関係』について解説します。
 
 新第7条によると、臨時雇用関係は、特別雇用事務所の仲介、もしくはホールディングの傘下又は関連会社内で他の業務を任命されることによって築かれます。
 特別雇用事務所の仲介による臨時雇用関係は、トルコ労働協会認可の特別雇用事務所と使用者間で締結される『臨時社員斡旋契約』によって、労働者が一時的にこの使用者に譲渡されます。
 
使用者は、どのような状況の際に、どのくらいの期間、このサービスを受けることが出来るのでしょうか。
 1.その状況が継続している期間中
       ・正社員とパートタイム従業員が、産休後子供が小学校に入学する日を含む月の末まで、両親の内片方が
        パートタイムを希望した際(同法第13条第5
項の状況)
  ・女性従業員が産休中(同法第74条の状況)
  ・従業員の徴兵期間
  ・雇用契約が保留されている期間
 2.常時
  ・季節的な農作業
  ・ハウスキーピング(介護人、ベビーシッター、掃除婦等)
 3.最高4カ月
  ・会社の通常業務と見なされない時折の業務
  ・労働衛生・安全上、急を要する職場で、又は生産に大影響を与える、やむにやまれぬ事態の発生時
  ・会社の平均商品・サービス生産能力が、臨時雇用関係を築かなければならない程度且つ不意に増加した際
    α. 臨時社員数は、全社員数の4分の1を超えてはなりません。
                    但し、社員数10人以下の会社では、5人まで雇用可能です。
    β. 使用者は、1カ月以上勤務した臨時社員に給与が支払われたかどうかを、
                    勤務した期間中毎月検査しなければなりません。
    γ. 特別雇用事務所は、臨時社員に給与が支払われたことを証明する書類を
                    毎月使用者に提出しなければなりません。
  ・季節労働を除く、定期的業務増加時
 
(注) :    ・『季節労働を除く、定期的業務増加時』を除き、合計8カ月を超えない条件
      で最高2回更新出来ます。
     ・臨時社員を勤務させる使用者は、定められた期間終了後6カ月経過しなけ
      れば、同じ業務に新たに臨時社員を勤務させてはなりません。
 
どのような場合、臨時社員を勤務させることが禁止されているのでしょう。

  1. 同法第29条の範囲で集団解雇を実施した会社で、集団解雇実施後8カ月間(a)
  2. 公的機関と地下鉱物採掘現場
  3. ストライキやロックアウト中(第6356号労働組合・集団雇用契約法第65条保留)(b)


使用者の義務と権利について

  1. 臨時社員を勤務させる使用者は、雇用契約を破棄された社員と、契約破棄日から6カ月間、臨時雇用関係を結ぶことは出来ません。
  2. 業務上且つ臨時社員斡旋契約の範囲で、臨時社員に指示する権利があります。(c)
  3. 会社での役職を臨時社員に知らせなければなりません。
  4. トルコ労働協会が要求する書類を、提示される期間保管しなければなりません。
  5. 臨時社員の労災・職業病に関し、即、特別雇用事務所に、そして第5510号第13条と第14条に従い関連機関に報告しなければなりません。
  6. 使用者は、臨時社員も、他の社員同等に、会社での福利厚生制度の対象としなければなりません。(d)
  7. 使用者は、臨時社員雇用状況に関し、労働組合に報告しなければなりません。
  8. 臨時社員に対しても、第6331号法第17条第6項に定められている教育を与え、労働衛生・安全に関する必要措置を取らなければなりません。(e)
  9. 臨時社員の基本的労働条件は、同じ使用者が同じ役職の為に直接雇用する場合の条件を下回ってはなりません。(f)


臨時社員の義務について

  1. 臨時社員を勤務させている使用者から、特別雇用事務所のサービス料に含めた形で前金を得たり、借金してはなりません。
  2. 第6331号法第17条第6項に定められている教育を受けなければなりません(e)
  3. 臨時社員の非により生じた損害は、業務に関して生じた場合に限り、使用者に対し賠償責任を負います。(g)


臨時社員の雇用者は誰なのでしょう。

 臨時社員の雇用者は、特別雇用事務所です。
 
どうすれば臨時社員を使用することが出来ますか。

 まず、特別雇用事務所と労働者間で雇用契約が締結されます。
 特別雇用事務所と臨時社員を必要とする使用者間で、書面にて臨時社員斡旋契約が締結されることによって、臨時社員を使用することが出来ます。
 
臨時社員斡旋契約書に記載されていなければならない事項は何ですか。

 ・契約開始日と終了日
 ・業務内容
 ・特別雇用事務所のサービス料
 ・あれば、特別雇用事務所と使用者の義務
 
臨時社員斡旋契約書に記載してはならない事項はありますか。

 臨時社員が、トルコ労働協会又は他の特別雇用事務所からサービスを受ける、もしくは臨時社員として勤務した後、臨時社員として勤務した使用者又は他の使用者のもとで勤務することを禁止した事項を記載してはなりません。
 
別雇用事務所と労働者間の雇用契約書の記載必須事項はありますか。

 雇用契約締結後どのくらいの期間誰にも使用されなければ、特別雇用事務所はそれを正当な理由として雇用契約を破棄出来るのかを記載しなければなりません。
 また、この期間は、3カ月を超えてはなりません。
 
臨時社員としての契約期間終了後も、臨時社員として勤務を継続していたら、どうなりますか。

 臨時社員斡旋契約終了後、臨時社員とその使用者間で、不確定期限雇用契約が締結されたと見なされます。
 この場合、特別雇用事務所は、臨時社員斡旋契約に基づく給与、労働者管理義務、社会保障保険料に対し、特別社員斡旋契約期間内のみ、責任を有します。
 
特別雇用事務所が給与を支払わない場合、使用者はどうすればいいのでしょう。

使用者は、臨時社員に支払われていない給与がある場合、これらが支払われるまで特別雇用事務所の債権を支払わず、特別雇用事務所の債権と相殺する条件で、最高3カ月分の給与を、直接、臨時社員の銀行口座に送金します。
 使用者は、給与を支払われない臨時社員名と支払われない額を、İŞKURの県支部に報告します。
 
臨時社員と労働法第30条(身体障害者・受刑者雇用義務)との関係はどうですか。

 臨時社員斡旋契約のもと勤務する臨時社員数は、特別雇用事務所・使用者の従業員数には含まれません。
 
ホールディング内や関連会社内での『臨時社員』扱いでは、どうなるのでしょうか。

 ホールディング内や系列会社内で、社員に、他の職場で一時的に業務を遂行させる場合に、『臨時社員』扱いと見なされます。
 臨時社員となる社員の書面による了承が必要です。
 臨時社員扱いは、最高6カ月間書面による契約によって成立します。更新は2回まで有効です。
 社員を一時的に譲渡した使用者の給与支払い義務は継続します。
 社員を一時的に譲渡されている使用者は、自分の下で勤務している期間支払われない給与、従業員管理、社会保障保険料に関し、社員を一時的に譲渡している使用者と共に責任を負います。
 上記(a)~(g)は、ここでも適用されます。
 
臨時社員に関する労働法第7条に反するとどうなるのでしょう。

 臨時社員毎に250TLの行政罰金が科されます。
 但し、同条第2項(f)の『会社の平均商品・サービス生産能力が、臨時雇用関係を築かなければならない程度且つ不意に増加した際』に反した場合、臨時社員毎に1,000TLの行政罰金が科されます。

弁護士 鳥越恵子