日本から見ると、地球の裏側にある国、トルコ共和国。海外進出が必須と言われる日本企業にとっての魅力とは何かについて、出来るだけ分かり易く見ていきたいと思います。
トルコ共和国を地図で見ると、三方を海(黒海・地中海・エーゲ海)に囲まれた日本の約二倍の国土を有する国です。
北アフリカ、中東・中央アジア・ロシア・ヨーロッパの中心に位置している商業都市イスタンブールには、2018年に世界最大の空港が完成する予定です。
多くの日本企業がタイに進出しているように、ドイツ企業は飛行機で2~3時間の距離にあるトルコ共和国に多く進出しています。トルコ共和国を中心とした国々への流通面での利点、若くて良質な労働力がその魅力ですが、他宗教に寛容で投資家への支援に力を入れていることも見逃すことは出来ません。
トルコ共和国は、地球の裏側にある貿易の中心地だからこそ、日本企業にとっては第二の本社所在地的役割を担っていけるのではないでしょうか。
質問と回答という形で説明していきます。
質問 ; トルコ共和国は投資者に対してどんな支援をしているのでしょうか。
支援内容
- 消費税課税対象外 : 投資奨励証の範囲内で、国内外から供給される投資用機器は、消費税対象外です。
- 関税免除 : 投資奨励証の範囲内で、外国から供給される投資用機器は、関税対象外です。
- 減税(投資奨励システム1・3・4番のみ) : 投資奨励証の範囲内で、所得税・又は法人税 が、投資を前提とした額に達するまで減税対象
- 雇用者負担の社会保障費への支援(投資奨励システムの1・3・4のみ) : 投資奨励証の範囲での投資の為に追加雇用された労働者の雇用者負担社会保障保険額の内、最低賃金における雇用者負担社会保障保険額は一定期間経済省が負担
- 利子に関する支援(投資奨励システムの3、研究開発・環境投資、第3・4・5・6地区での地域的奨励でのみ)
・投資奨励証の範囲内で利用される最低1年満期のクレジットに対する融資支援
・投資奨励証に記載されている一定投資総額の70%まで利用されるクレジットに対し支払われる利子又は利潤分配分の特定の割合を経済省が負担 - 投資場所の割り当て(投資奨励システムの1・3・4のみ) : 投資奨励証が発行されれば、財務省の取り決めに従って投資場所が設置され得る。
- 消費税還元 : 一定投資総額5億TLを超える戦略投資の範囲内でなされる建物建築費に科される消費税は還元される。
- 源泉所得税への支援(第6地区のみ) : 投資奨励証の範囲での投資の為の追加雇用に対し支払う源泉所得税の内、最低賃金におけるその額が10年間減額される。
- 労働者負担の社会保障費への支援(投資奨励システムの5以外で、第6地区でのみ) : 投資奨励証の範囲内での投資の為に追加雇用された労働者が負担する社会保障保険額の内、最低賃金における労働者負担の社会保障保険額分は、10年間経済省が負担
投資奨励システム
- 地域的な奨励 各県の発展状況の差を少なくし、潜在的な生産・輸出量を増加させるのが目的です。
最低50万TL(支援される業種と県によって異なる) - 優先的な投資項目 特定の投資項目には、第5地区と同等の支援がなされます。
- 戦略投資 経常勘定赤字を減らすことに貢献する付加価値の高い投資を支援します。
5千万TL以上 - 大規模投資 技術と研究開発をレベルアップする競争力のある投資を支援します。
最低5千万TL(投資項目によって異なります) - 全般的奨励 奨励対象外の全項目を対象とした奨励策です。
第1と第2地区 : 100万TL以上
第3~第6地区 : 50万TL以上
質問 : 6つの地区には、それぞれどの県が含まれているのでしょうか。
第Ⅰ地区 : アンカラ、 アンタルヤ、ブルサ、 エスキシェヒール、 イスタンブール、 イズミール、 コジャエリ、 ムーラ
第Ⅱ地区 : アダナ、 アイドゥン、 ボル、チャナッカレ、 デ二ズリ、 エディルネ、 ウスパルタ、 カイセリ、 クルクラーレリ、
コンヤ、 サカルヤ、 テキルダー、 ヤロワ
第Ⅲ地区 : バルックエシール、 ビレジク、 ブルドゥル、 ガージアンテップ、 カラブュク、 カラマン、 マニサ、 メルシン、
サムスン、 トラブゾン、 ウシャック、 ゾングルダック
第Ⅳ地区 : アフヨンカラヒサール、 アマスヤ、 アルトウィン、 バルトゥン、 チョルム、 ドゥズジェ、 エラズー、
エルジンジャン、 ハタイ、 カスタモヌ、 クルックカレ、 クルシェヒール、 クゥタハヤ、 マラトヤ、 ネヴシェヒール、
リゼ、 シワス
第Ⅴ地区 : アドゥヤマン、 アクサライ、 バイブルト、 チャンクル、 エルズルム、 ギレスン、 ギュムシュハーネ、
カハラマンマラシュ、 キリス、 ニーデ、 オルドゥ、 オスマーニイェ、 シノップ、 トカット、 トゥンジェリ、 ヨズガット
第Ⅵ地区 : アール、 アルダハン、 バトマン、 ビンギョル、 ビトリス、 ディヤルバクル、 ハッカーリ、 ウードゥル、 カルス、
マルディン、 ムシュ、 シイルト、 シャンルウルファ、シュルナク、 ワン
質問 : 地域的奨励策とは何ですか。
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ Ⅵ
消費税課税対象外 有 有 有 有 有 有
関税免除 有 有 有 有 有 有
減税 投資貢献率(%) 工業地帯内 15 20 25 30 40 50
工業地帯外 20 25 30 40 50 55
雇用者社会保障保険料支援 工業地帯内 2年 3年 5年 6年 7年 10年
工業地帯外 3年 5年 6年 7年 10年 12年
投資場所の割り当て 有 有 有 有 有 有
利子への支援 国内クレジット ― ― 3P 4P 5P 7P
(P=ポイント) 外貨・外貨換算クレジット ― ― 1P 1P 2P 2P
質問 : 第Ⅴ地区の支援を得られる優先的な投資とはなんでしょう。
・ハイテクノロジー製品の製造への投資
・薬品製造
・オフィス/会計/情報処理機器の製造
・ラジオ/テレビ/通信機器の製造
・医療機器/精密機器/光学機器/時計の製造
・飛行機/宇宙船の製造
・研究開発プロジェクトの結果得た製品の製造に対する投資
・防衛関連への投資
・テストセンター/風洞等への投資
・特定の自動車とエンジンへの投資
・鉱業/鉱物探査への投資
・教育への投資
・省エネ対策への投資
・排熱利用による発電への投資
・液化天然ガスと天然ガス地下貯蔵への投資
・国産石炭使用の火力発電所への投資
・カーボンファイバー/統合された複合材料製造への投資
・鉄道輸送への投資
・海上輸送への投資
・文化/観光保護、開発地域又は温泉観光用観光宿泊施設への投資
・国際博覧会会場への投資
・再生可能エネルギー生産用タービン/発電機、風力発電に使用するプロペラ製造への投資
質問 : 優先的な投資への支援の詳細を教えて下さい。
消費税課税対象外 有
関税免除 有
減税 投資への貢献度(%) 40%
減税(%) 80%
雇用者負担社会保障保険料支援 7年
投資場所の割り当て 有
利子への支援 国内クレジット 5P
(P=ポイント) 外貨・外貨換算クレジット 2P
*第Ⅰ~Ⅴ地区での投資 : 第Ⅴ地区での支援
第Ⅵ地区での投資 : 第Ⅵ地区での支援
質問 : 戦略投資の条件とは何でしょうか。
- 最低一定投資額が5千万TL以上であること
- 国内総生産能力が輸入量より少ないこと
- 付加価値が最低40%であること
- 過去1年間の総輸出額が5千万USD以上であること
(最低一定投資額が30億TL以上の《優先的な投資》は戦略投資と見なされます。)
質問 : 戦略投資への支援の詳細を教えて下さい。
消費税課税対象外 有
関税免除 有
減税 投資への貢献度(%) 50
雇用者負担社会保障保険料への支援 7年(第Ⅵ地区では10年)
投資場所の割り当て 有
利子への支援 国内クレジット 5P
外貨・外貨換算クレジット 2P
労働者負担社会保障保険料への支援 10年(第Ⅵ地区のみ)
源泉所得税支援 10年(第Ⅵ地区のみ)
消費税還元 有(5億TL以上の投資のみ)
質問 : 大規模投資とは何ですか。
精製石油製品の製造 : 10億
化学品と化学製品の製造 : 2億
港湾・港湾サービスへの投資 : 2億
エンジン付き陸路輸送車の製造への投資 : 2億
エンジン付き陸路輸送車産業への投資 : 2億
エンジン付き陸路輸送車補助産業への投資 : 5千万
鉄道/路面電車機関車と/又は車両製造への投資 : 5千万
電子産業への投資 : 5千万
医療機器、精密機器、光学機器製造への投資 : 5千万
薬品製造への投資 : 5千万
飛行機、宇宙船と/又はその部品製造への投資 :5千万
機械(電気機械・電気機器を含む)製造への投資 : 5千万
金属製造への投資 : 5千万
鉱物法で明記のⅣ/cグループの金属鉱物の
鉱石と/又は選鉱後の金属製品への投資
(この施設での統合鉱業への投資を含む) : 5千万
質問 : 戦略投資への支援の詳細を教えて下さい。
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ Ⅵ
消費税課税対象外 有 有 有 有 有 有
関税免除 有 有 有 有 有 有
減税 投資貢献率(%) 工業地帯内 25 30 35 40 50 60
工業地帯外 30 35 40 50 60 65
雇用者社会保障保険料支援 工業地帯内 2年 3年 5年 6年 7年 10年
工業地帯外 3年 5年 6年 7年 10年 12年
投資場所の割り当て 有 有 有 有 有 有
質問 : 全般的奨励とは何ですか。
奨励されていない投資項目やその他の奨励実施の対象でない投資であっても、上記最低投資額の条件を満たしている投資に対し、消費税課税対象外事項、関税免除を実施し、第Ⅵ地区では源泉所得税を支援しています。
また、工業地帯での投資と業界が一丸となった投資では、減税と雇用者負担社会保障保険料への支援において、一つ番号の小さい地区(例えば第Ⅲ地区なら第Ⅱ地区)への支援内容で支援されます。
質問 : 2016年1月1日以降の投資に対する支援率と支援期間はどのくらいですか。
《減税》 – 地域的奨励と大規模投資奨励 –
実施される投資貢献率
地区 投資貢献率 減税率 投資期 経営期
第Ⅰ地区 10% (20%) 50% 50% 50%
第Ⅱ地区 15% (25%) 55% 55% 45%
第Ⅲ地区 20% (30%) 60% 60% 40%
第Ⅳ地区 25% (35%) 70% 65% 35%
第Ⅴ地区 30% (40%) 80% 70% 30%
第Ⅵ地区 35% (45%) 90% 80% 20%
減税は、投資奨励証記載の投資によって得た利益に対して行われます。
《雇用者負担の社会保障保険料支援》
第Ⅰ地区 ― 10% 3% 15%
第Ⅱ地区 ― 15% 5% 15%
第Ⅲ地区 3年 20% 8% 15%
第Ⅳ地区 5年 25% 10% 15%
第Ⅴ地区 6年 35% 11% 15%
第Ⅵ地区 7年 ― ― ―
戦略投資での支援期間 : 第Ⅵ地区では10年、その他の地区では7年です。
《利子での支援》
クレジット(TL) クレジット(外貨)
研究開発 5P 2P 50万
戦略投資 5P 2P 投資の5%、
地域的奨励 第Ⅲ地区 3P 1P 50万
第Ⅳ地区 4P 1P 60万
第Ⅴ地区 5P 2P 70万
第Ⅵ地区 7P 2P 90万
《第Ⅵ地区》 – 最低賃金計算 – 01.01.2016 – 31.12.2016期
給与総額 1,647.00TL
労働者負担の社会保障保険料 230.58TL 230.58TL
労働者負担の失業保険料 16.47TL
源泉所得税 209.99TL 209.99TL
印紙税 12.50TL
差し引かれる総額 346.01TL
手取り額 1,300.99TL
雇用者負担の失業保険料(2%) 32.94TL
雇用者負担額 1,935.23TL 778.21TL
質問 : 投資奨励証って何ですか。
投資の特性値が記載されており、奨励目的に沿った投資に対し作成され、投資が最低条件を満たす形でなされた場合に、記載の支援を得られることを保証する証書です。
質問 : 外国人では、誰が投資奨励証を得ることが出来るのですか。
外国籍企業のトルコ共和国での支店
質問 : 投資奨励書の申請先はどこですか。
経済省奨励実施・外国資本庁、又は一定投資額が1千万TLを超えない公報(2012/1号)で明記の投資項目の場合は、投資目的地を管轄とする開発庁又は工業会議所です。
質問 : どうすれば投資奨励を受けられますか。
奨励決議で定められた投資奨励を受ける為には、支援されている項目に準じて投資し、経済省発行の投資奨励証を得なければなりません。
質問 : 投資奨励証申請に必等な書類は何ですか。
・投資家を代表する方(方々)の署名付申請書
・代表者の公証人役場認証済承認権者の署名一覧表
・投資情報フォーム(各ページに署名権者の署名と社印捺印)
・宣誓書
・機器一覧表
・経済省への申請 : 経済省流動資産事業部の指定口座へ400TL振り込んだことを証明する書類
地方担当機関への申請 : 経済省流動資産事業部の指定口座へ300TL、地方担当機関指定口座に100TLり込んだことを証明
する書類
・会社の株主構成、資本額、業務内容の最新状況を掲載したトルコ商業登記新聞の原本又は公証人役場認証済コピー
・社会保障機関に対し負債・未納の行政罰金の無いことを証明する書類
・対象者は、環境への影響評価良好決議書又は環境への影響評価不要決議書
・戦略投資においては、別途必須条件に関する技術・資金・業界調査・概算を含む実現可能性報告書
質問 : 40%の最低付加価値とは、どうやって算出されるのですか。
戦略投資の範囲内で生産される製品の付加価値計算は、公報(2012/1号)添付資料10に明記されています。投資の結果生産される製品に関しては :
付加価値の割合 = (製品の総販売価格ー総投入コスト)÷総投入コストx100